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いろいろ考えさせられたマッカーシー監督新作映画のほろ苦い幕切れ – 映画な生活 – 芸能コラム : 日刊スポーツ


異文化が混じり合うフランスの港町、マルセイユで暮らすヴィルジニー(カミーユ・コッタン)はシングルマザーの舞台女優にして移民ボランティアも務める意識の高い女性だ。米国からやってきて、行きがかりで同居することになったビル(マット・デイモン)は感じはいいが、本来なら混じり合うことのない武骨な男だ。

ヴィルジニーのおしゃべりな女友だちが好奇心から「あなたトランプに投票したんでしょ?」と聞く。ビルは「いいや」。女性同士はホッと顔を見合わせるが、ビルは一拍おいて「刑務所に入っていたから、入れることが出来なかった」と続ける。2人はあきれ顔でため息をつく。

排他的、独善的なトランプは2人にとって絶対的な「悪」だが、米国で石油掘削作業員として働き、現在は失職中のビルにとっては希望の星だ。

「スポットライト 世紀のスクープ」(16年)のトム・マッカーシー監督の新作「スティルウォーター」(14日公開)では、こうした行き違いや裏返しが積み重ねられる。複雑化した現代社会のやり切れなさが、登場人物のため息とともに伝わってくる。

オクラホマ州の寂れた街で暮らすビルは失業を機に、過去の過ちから疎遠になっていた1人娘アリソン(アビゲイル・ブレスリン)をマルセイユに訪ねる。留学していた彼女は女友だちのレナを殺害した罪で現地で服役しており、逮捕されて以来ずっと無実を訴え続けていた。面会したビルは「真犯人の手掛かり」を書いたメモを手渡される。が、メモを読んだ担当弁護士の態度はすげなかった。

もともと法に疎い上に、法制度や文化の違い、何より言葉の壁がある。途方に暮れるビルに助けの手を差し伸べたのがひょんなことで知り合ったヴィルジニーと娘のマヤ(リル・シャウバウ)だった。ビルは必死な思いだけを原動力にマルセイユの「闇」に覆われた真相に迫っていくが…。

いつもさりげなくうまいデイモンは、今回もチェックのシャツをスタンダードなジーンズにたくしこみ、「掘削作業員」になりきっている。ドラッグのはびこるスラム街に1人乗り込む場面でも、命懸けながら、どこか頼りない雰囲気を漂わせている。それでも絶対大丈夫と思ってしまうのは、こちらが勝手にジェイソン・ボーンのイメージを重ねてしまっているからかもしれない。

娘のアリソンと殺されたレナが実は恋人同士の愛憎関係にあったり、そのレナがアラブ諸国からの移民であったり、とマルセイユでの人間関係はどこまでも入り組んでいる。マッカーシー監督は、オクラホマのパートを、対照的にのほほんと描き、米地方都市のさまざまな「無自覚」を皮肉る。

なんともほろ苦い幕切れにいろいろ考えさせられた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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