コロナ禍で暮らす女性の孤独や希望を描いた短編四話からなる映画「ワタシの中の彼女」が公開中だ。職業、年代が異なる主人公を女優の菜葉菜(なはな)ひとりに演じさせたことに、中村真夕監督は「立場、世代は違っても、同じ思いを抱えた女たちの姿が浮き彫りになるのではと考えた」と理由を明かす。
各話の主人公は、友人とのリモート飲みから人生の選択を見つめ直す四十代の主婦、リモートワークの孤独をフードデリバリーの男性との交流で癒やそうとする三十代の独身OL、女優の目標を見失った二十代の風俗嬢、詐欺を仕掛けられる四十代の盲目女性。都内で二〇二〇年、バス停で寝泊まりするホームレスの女性が殴殺された事件をベースにした話もある。
二一年夏から秋に撮影した。「自分の一生で、たぶんもうないであろうパンデミック(世界的大流行)を描かないわけにはいかなかった」ことが動機だった。短編の連作には「長編にはない、日常を切り取る面白さがある」といい、「孤独や不安、人とのつながりを欲している女性たちが見て共感してもらえればありがたい」と話している。
東京・渋谷のユーロスペースで上映中。 (上田融)